Artist Voice Vol.3
自分の中に存在する故郷のような
理想の世界に瞑想して入り込む。
愛菜|エナ|
精神面では、描こうとしている世界に瞑想して入り込み、
そこにいるかのような状態になって、空気、温度、匂い、雰囲気を感じ、それを絵にすると言うのが理想形。
イラストレーター、として活動されている愛菜さん。
京都造形芸術大学イラストレーションコース卒業後も精力的に展示を行い、たしかな実力で幻想のストーリーを描き出します。
これまでのルーツ、制作への想い、これからのビジョンなど、丁寧にインタビューに応えていただきました。
愛菜 絵描きのルーツ
『好きなイラストレーターさんの絵が表紙の本を見つけてジャケ買いした時に、自分もこんな風に人の心を動かせるようになりたいと思った。』
イラストレーターになりたいと思った理由を教えてください。
小学生の頃は姉が描いていたのを真似したり、友達と漫画の交換をしたりして遊んでいました。
漫画家になりたいと思っていたある時、1枚でストーリーを含んだ絵を完成させるのが好きだと気づきました。
1枚のイラストで仕事ができるのか調べるとイラストレーターと言う仕事を見つけ、これだ!と思ったんです。
そして中学生の頃から芸大で絵の勉強がしたいと思い始めました。
それから高校生になり、本屋さんで好きなイラストレーターさんの絵が表紙の本を見つけてジャケ買いした時に、自分もこんな風に人の心を動かせるようになりたいと思ったのが一番の決め手でした。
大学に進学されてからどうでしたか
イベントでは色々な出会いがありました。作家さんとの出会いはもちろん、お客さんとして来てくださった方と後々一緒に作品を作ったり、イラストを依頼してくれたり、今でも展示を見にきてくださったりと、本当に素晴らしい経験だったなと思います。
負けずに頑張ろうと思えます。
卒業してからはいかがですか?
大学の同期もデザイナーが多いですが、イラストレーターとして頑張っている子、アーティストとして活躍している子もいて、自分も負けずに頑張ろうと思えます。
寺田順三先生と出会って
イラストを習いはじめてからどのような変化がありましたか?
考え方とかイラストの方向性に関して悩んでしんどいこともありましたが、ちゃんと向き合う時間になったと思います。
先生がおっしゃっている事は取り入れれば絶対良くなる内容で、自分の信念とうまく結びつけるにはどうしたらいいかを模索しました。
構成であるとか、見せ方であるとか、どこを見せるか主題は何かと言う見せ方に関して、どのように反映させたらいいかということが課題です。
寺田先生に言われた事は他のデザイナーさんにもよく言われることだったので、これは直すしかないかなと思いました。仕事にしたいので、仕事にならなければ困るのです。
世界観のまま仕事になるのが理想です。
世界観を保ちつつより良いものにしたいです。いろんな方に受け入れてもらえるようなイラストにしたいです。
空気、温度、匂い、雰囲気を感じ
それを絵にすると言うのが理想形。
愛菜さんが絵を描く時に大切にしていることはなんですか?
その世界にはどこにいても集中さえすれば入っていけます。
時間がないとか疲れている、心に余裕がない時は、なかなかその世界に入っていくことが難しいです。
1番ブレたくない部分です。
私の世界を伝えたいというよりは、感じてほしいという思いが強いです。
雰囲気を見てなるほど、と思ってほしい、同じ空気を吸って欲しい。
瞑想して世界に入り込み、こういう空気である、と私が描いたものは見ていただく方も同じように感じてもらえることが多いです。その時には成功したなぁと感じます。
世界観などは自由に想像してもらっていいのですが、どういう気持ちになったのかとか、根本的な「こういう風を感じた」というのは割と共通した感想としてあると、嬉しくなります。
自分の中に存在している故郷のような
理想の世界です。
世界観はどのように生まれるんですか?
嫌なこともなくて、お腹も空かない、ただただ穏やかな世界です。
それが表現したい大枠の世界観としてあり、ふいに日常生活の中で目にした風景や物を通して頭の中に現れるのです。
そこで見えた景色を絵に落とし込んでいます。
登場するモチーフを教えてください。
1つ目は、白い柱。これは崖と雲がセットになって出てくることが多いです。それらは自分の頭の少し上にある世界であることを表しています。
2つ目は木です。木を描き始めたのは去年ぐらいからで、最近よく描いています。自然の木も森も好きです。
描かれている樹に関しては神社にある御神木と言うイメージが強いです。
樹は単純に形が面白く描くのが楽しいですね。
樹に関しては、今は普通に茶色なんですけどその前は柱とセットで、白い色で現実にはなさそうな螺旋状の形状を描いていました。そこからの延長で表現が発展したと思います。
もともと自分の中にあった理想の形を描いています。
3つ目は、少女を描いていますが、特にこだわりがあるわけではなくて、いっときは人が出てこない絵を描いていました。
その世界を表現しやすくするためにモチーフとして人物を描いていることが多いのと、自己投影という意味で、その場にいる自分を俯瞰して見ているような意識もあります。
私の描く世界はさらに上の世界と、地上ともつながっている広がりのある世界です。
それぞれのモチーフは、世界同士をつなげる役目があります。
描きたい世界観にも合うと感じます。
画材にかんして、水彩絵具を選んだ理由を教えてください。
それまで使用していたコピックは広い面積を塗るのが苦手な画材で、
その点絵の具はさっと塗れるので描きやすいと感じました。
水彩絵具は、岩崎ちひろさんの絵を見てきれいだなと思ったのと、イラスト雑誌のスモールエスと言う読者が投稿する雑誌を拝見し、水彩で描いている方の絵が好きで真似て描いていました。
色が美しい、優しいにじみが素晴らしい、
淡い感じがより幻想的な雰囲気を出せるので、
描きたい世界観にも合うと感じます。
愛菜さんが描くときに使用する色彩に関して聞かせてください。
柱や崖が白色というのもその世界観と繋がってるんです。
今まで特に色のこだわりはなかったです、最近の作品には一貫性を持たせるために夜の雰囲気として紺色を選びました。
変わらないのは、制作の根底にあるのは白色です。
青っぽいグレーの影や、淡いピンクで彩られているものです。
本当はもっと上手に描きたいです笑
瞑想の世界は白色ですね。
究極の世界を描くまでの道のり、そうですね、今は真ん中ぐらいですかね。
アーティストのCDジャケットですとか、
本の装画という
人目に触れるイラストをやりたいです。
イラストレーターとして今後のビジョンをお聞かせください。
人目に触れるイラストをやりたいです。
子供の頃に思い描いた夢でもあるので、自分のイラストが書店に並ぶという経験を「味わわなくっちゃ」と言う気持ちがあります笑
年に1度、鈴木成一さん(日本の装幀家)が開催されている装画塾に参加しました。
実際のお仕事を課題にコンペ形式でされるのですが、
まず本を読んで解釈して1番良い場面を描くことが果てしなく大変で難しく思いました。
画家として作家としても良い作品を作って多くの方に見てもらいたいです。
自分の世界観をもっと追求して、自分だけでなく見てくれる人にも共有できるようになりたいです。
個展は継続して年に1回はやりたいです。
できればいろんなところで、海外も視野に入れています。
究極を言うと旅人になりたいです笑
イラストレータにこだわると言うよりは、人の役に立ちたいと言う思いがあります。
必要とされ、声をかけてもらえればお役に立ちます!という存在になりたい、そのためにスキルを磨きたいです。
最後に来てくださる方へのメッセージ
心の目で見て欲しいです、雰囲気を感じてほしいですね。空気感ですとか。
「NANIWA GIRLIE 5人展」
愛菜 全日在廊の予定です。
Profile 愛菜
せつない幻想のストーリーが織りなす連作をたしかな実力で描き出す。
活動情報はツイッターにて発信しております。
愛菜 official site https://aaazny.com/
取材/文/撮影 = 高田久紀
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