Artist Voice Vol.2
制作の芯は
「生と死と記憶」
Suisui
生と死と記憶に興味があり
身近な動物の姿をモチーフに表現しています。
犬をはじめとした動物の姿や佇まいから伝わる
内面性や生の温もり
死後もともに生き続ける記憶の影を
愛おしく思い描いています。
画家として活動されているSuisui (スイスイ)さん。
女子美術大学芸術学部美術学科日本画専攻 卒業 後も
精力的に作品を制作されており2019年は個展を2回予定されています。
これまでのルーツ、作品への想い、これからのビジョンなど、丁寧にインタビューに応えていただきました。
Suisui
絵描きのルーツ
『 絵を描かざるを得ない状況を
作ってから卒業しなさい』
Suisuiさんは、なぜ絵描きになったのですか?
そして東京の美大に進学してからは描いた絵を発表するようになり、卒業後の数年はとにかく描き続けなければと必死でした。
美大を卒業する前に、お世話になった先生から「絵を描かざるを得ない状況を作ってから卒業しなさい」とアドバイスされたのですが、リミットを設定していく大切さを痛感しました。締め切りに苦しみ、締め切りに救われています。
制作で大切にしていることはなんでしょうか。
私は主に犬をモチーフに作品を作っています。
犬は子供の頃から一緒に育ってきた身近な存在で、歴史的な面でも、とても古い時代から人間と深い関係を築いてきた動物です。群れを作って生きるということも人間と近いです。
卒業制作では「犬の群像」を描きました。
初めて飼って、一緒に成長してきた犬を病気で亡くしました。
とても悲しい出来事でしたが、もう存在しないその犬が、日常の中ですぐそこにいる感覚や気配を感じていました。
その経験からもう亡くなってしまったけれど私の記憶の中には存在している、私の一部になって生きていると考えるようになりました。
その記憶は悲しみに包まれながらも暖かい存在で、今でもずっと一緒にいると感じています。
「命」や「身近な動物の代表」
として
犬を捉えています。
影響を受けた本はなんですか?
「アンジュールある犬の物語」(著:ガブリエルバンサン)という本です。
言葉のないシンプルな絵本で、犬の気持ちが線から伝わってきます。
この絵本に出会って、その1年後にまた犬を飼いました。
そこからは様々な想いを伝える表現として犬を選び、「命」や「身近な動物の代表」として犬を捉えています。
犬などの人の近くにいる動物たちは、獣でありながら人間社会の一員であり、守らなければいけない存在だと感じています。
彼らは人の些細な行いや愛情の向け方次第で、その命、心、尊厳が大きく左右されます。自分の気持ちを上手に伝えるための言葉も持ちません。そこから子どもや社会的弱者を連想させます。
強く希望して勤務していた特別支援学校での経験や、生きづらさの中で消えてしまいそうな人に寄り添う日々から、子どもたちや社会的に弱い立場の人々のことをいつも考えています。
まだ私の中でしっかりと言語化はされておらず、どう向き合っていくべきなのかという思いはありますけれど、人間のことを想い、そのモチーフとして犬を描きながら、私自身の心のやり方を考えています。
日本画の画材が好きです。
使用されている画材について教えてください。
純粋に岩絵の具が持つ素材の魅力に惹かれる人は多いのではないでしょうか。
岩絵の具は「鉱石」を細かく砕いて作っているので、絵具の色がとても美しく綺麗です。
光によって見え方や輝きが変化します。
同じ絵でも1日を通した生活の中で見ていますと、朝、昼、夜、照明のライトの光によって全く見え方が異なり、生きていると感じることがあります。
またその「生きている」という感覚が、そこにいないけれど存在する想いとつながり、はっとした瞬間に「命」を感じることがあります。生命を感じます。
黒色は「死」と「生」の
両面を持つ色という意味で使っています。
黒色で制作をされていますが、黒色への想いを聞かせてください
例えば演劇などの黒子は劇中で「いないもの」として成り立っています。
一方で、絵の具の色を全部混ぜると黒色になり「すべての色を内包する、エネルギーの集合体」であると感じます。
なので黒色は「死」と「生」の両面を持つ色という意味で使っています。
「死」は悲しいというよりも、全ての者に訪れるものです。ただ私はまだ受け入れ方はわからないです。わからないですが、絵を描くことが自分自身の探り方であると感じています。
作品を発表していろいろな見方、感じ方を知ることでひろがりもある。絵を描くことが生きることに近いです。
私の願いとして
「生と死と記憶を結びつける」ことが
できたらなぁと思い描いています。
今回の作品に描かれている「鮮やかな花びら」は何を表現しているんですか?
制作の原点である昔飼っていた犬の記憶が影となって、向こう側にいる、
花が咲いているその影に存在しているようなそんな気配を感じさせるものです
命のすべてを表していて、守られるべき者の存在、長く生きられなかった者たちも愛したい、そういうベールの向こうのような、カーテンのようなものの向こうに記憶がたゆたっているような、そういうものの象徴として花びらを描きました。
またこの赤という色は、黒が記憶の影を表すのに対し、
現実の鮮やかなもの、温かみや、生きている生命を表します。
私の作品に描かれているモチーフは、生きているか、死んでいるか、見る方の記憶によって解釈が異なり、昼寝をしてるように捉える方、一方で安らかに永眠しているように捉える方がいらっしゃいます。
これはその人の、今を生きているものがかわいいと感じるのか、または過去の出来事を思い出すのか、というように記憶を引き出すものであると感じます。
私の願いとして「生と死と記憶を結びつける」ことができたらなぁと思い描いています。
10年後20年後も
ずっと絵を描き続けていたいです。
今後の展望としてどのようにお考えでしょうか。
2019年は個展を2つ開催しますので
しっかりと取り組むスケジュールになります。
10年後20年後もずっと絵を描き続けていたいです。どんな広がりができるのでしょうか。
日本から世界に出たい気持ちはあって、いろいろなコンペにも参加したいです。
また私の使う画材は日本画で使用する岩絵の具ですが、だからといって日本画家という枠ではなくただのペインターとして振舞いたいです。
見ていただく方へ
展示を見に来ていただく方へメッセージをお願いします。
命や死生観というのは誰の日々から切り離せることではなく、命の数だけそれぞれの物語がある。
私の作品を見て何かを感じてもらえると嬉しいです。また何を感じたのかを教えていただけると嬉しいです。
さいごに
Naniwa Girlie 5 同時開催!!
銀座老舗ギャラリー「画廊宮坂」グループ展に参加
「サンクスの会」2019/02/25~03/02
ぜひとも銀座7丁目を「はしご」でお越しください。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~miyasaka/top.html
Naniwa Girlie 5 'mignon cosmo'―夢の狭間にある、心地よさのエトセトラ―
2019年2月26日tue.-3月2日sat.
【在廊予定】
2月26日(火)、27日(水)、2日間、在廊いたします。
Profile Suisui 画家
1990 兵庫県生まれ
2016 女子美術大学芸術学部美術学科日本画専攻 卒業
兵庫県在住
Suisui official site https://suisui0531.jimdo.com/
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