Artist Voice Vol.1
描きたいのは安心して共存できる世界。
イラストレーター、グラフィックデザイナー
北窓優太。
制作するときには穏やかで静かな音楽が常に流れていて、
そういう世界を描きたいなぁと思って描いています。
夜の孤独感だとか月あかりとか、そういうものに強く惹かれます。
好きな世界観というのは昔からずっと今まで続いていると感じます。
イラストレーター、グラフィックデザイナーの2本の柱で現在活動されている北窓優太さん。
絵描きとしては、多数のグループ展に参加、個展も開催され、
グラフィックデザイナーとしてはさまざまな絵作りをされています。
最近ではCONVERSE BASKETBALL WEAR『BC BACKCOURT EDITION』2018SS
シーズンビジュアルをてがけるなど活躍中です。
これまでのルーツ、制作への想い、これからのビジョンなど、丁寧にインタビューに応えていただきました。
北窓優太、絵描きのルーツ
『インドの国境の町で倒れた時に、初めて自発的に絵を描き始めたんですよ』
イラストレーターになった原点が『国境で倒れる』とは?
高校卒業して3年間バンド活動し、バンドの告知やフライヤーを手作りしていて、昔はパソコンは全然触れなかったので手描きで行っていました。今なら全部パソコンでやるようなことでしたね。
幼い頃から絵を描くのが好きと言うこともあってバンドの中ではその役割でした。
その後、僕はバンドをクビになりましたけれど、抜けた後のバンドは結構人気でした(笑)
インディーズレーベルからCDが出ることになっていまして、
バンドのアルバムジャケットを描いてほしいと言われました。
アルバムは全体としてはモノクロに彼岸花の赤だけが入ると言うデザインでした。それを仕上げて3ヶ月の旅に出ました。
その3ヶ月の旅はどのような旅だったのでしょうか。
インド、ネパール、チベットとタイを3人で旅をしていたんです。
インドのちょうど国境の町にいる時、一人が水にあたったらしくシャワールームで血を吐いて倒れました。
もう映画で見るような光景でした。
リキシャに病人をのせて運んでいる最中、野犬に襲われ棒で払いながら逃げたり、国境の町ということで警備が固く銃をつきつけられたりと。
病院にたどり着いても蚊がたくさんいて大変でした。
次の日、同じものを口にしていたので僕含め残りの2人もダウンしました。
とにかくそーゆーしんどい町に5日間ほど滞在することになりました。
心身ともに疲れきっていて、そんな中たまたま持ってきていたスケッチブックと絵具で絵を描き始めたんですね。
なんか自発的に描き始めたそれが最初です。
最初に描いたのが日本の浴衣美人だったんですね笑。
癒しを求めてたんだなぁと思います。
そこからインドで感じたものや見たものを描くようになって
旅の中でスケッチブックが埋まる位描きました。
絵を描くことって楽しいなぁって、そーゆー仕事ってあるのかなあと思いながら帰国しました。
帰国後はどうされましたか?
モノクロ部分が勝手に着色された状態で!
タワレコという公の店頭に並んでいる嬉しさと、勝手にイラストを変えられてしまったくやしさを味わいました。この一連の体験がこの道に入るきっかけになったと思います。
22歳位の頃の話です。
「デザインも絵」「文字も絵」という発見。
イラストレーターになるためどのような活動をされたのですか?
幼い頃のバイブル『大千世界のなかまたち』の作家さんであるスズキコージさんが講師として来られるということで専門学校を選びました。
卒業間近ではじめて、食べていくためのイラストレーターと言う選択はとても間口が狭いということを知りました。家庭を持ちたいと言う思いもありグラフィックデザイナーとして就職をしました。
ただ、会社にデザイナーとして就職してデザインを経験し
「デザインも絵であるし、文字も絵である」という発見をしました。
「レイアウトに関わる全てが絵だ」と気付いてからはとても楽しくなりました。
1番やりたい事は「絵」を描くこと。
自分で仕上げたものが世に出てくれたらすごく嬉しいなぁと思います。
グラフィック面、イラスト面でもご活躍中の身ですが、ご自身の目標に対してなどいかがですか?
日々の仕事と、やりたいことを「イコール」にしていきたいと考えています。
まだ完全には重なりきってはいないですが目指すところに近づいている実感はあります。
僕の持っているイラストの種類というのはいくつかあって
「仕事での方向性」と「自己表現」として使っている方向性が2分されていると感じています。
案件によって使い分けたりもします。
自己表現の作品をたくさん作って発信していく事で
やりたいことが叶っていくんだろうなぁと取り組んでいます。
ただ、見てもらいたい人に自分からアプローチをしていく、発表で終わるのではなく、
ちゃんと届けることを大切にしています。
描く作品は『安心して共存できる世界』がコンセプトです。
動物と人間をよくモチーフにされていますが制作のコンセプトなどお聞かせください。
僕の作品は『安心して共存できる世界』というコンセプトで人や動植物の存在する世界を描くことが多いです。
アフリカに行った時に野生の動物を目の当たりにした経験が大きかったとおもいます。ただ、よく動物と人がニコニコとたわむれる絵を目にしますが、本当はもっと全然きれいごとじゃなかったりする。
動物と人間なんてわかりあえるものではないし、人間だけが突出して脳が発達しているので自分の都合の良いように解釈しているけれど、動物はもっと単純で純粋で、残酷で、そして美しい。
僕は人間だから人間に感情移入するけれど
とくに野生動物というのは理解はおよばないけど、美しいものとして近くにいてくれたらなとあこがれる存在です。こういう絵 (動物と人間が同じ画面上にいる)を描いていく以上そういうキレイごとじゃないところと常に向き合わなければならないと思ってて、絵の中に動物を入れて描く自分はそうあるべきと思っています。
弱肉強食、食うものと食われるものの関係性などもありますが、そういうおもいや理屈を一周したうえで、僕は「安心して共存できる世界」を描きたいなと。
なかなかうまいこと自分の中でもまとまってないですけれど。
僕は人間だから人間に感情移入するけれど、
動物というのは美しいものとして近くにいて欲しいなという願い。
制作表現ではどういったことをこころがけているのですか?
いくつかのモチーフを入れて1枚を構成することで表現したいことを伝えています。制作のサイズに関係なくそういう表現になりますね。
映像を見ながらモチーフの研究をしたりもします。
「変化するもの」もあれば制作の根底にある「変わらない」ものもあるかと思いますがいかがですか?
「変わらないもの」は根底に流れる大きなコンセプトです。
絵をちゃんと描きはじめて10年以上になりますが、やっぱりそこは今も変わってないです。最近感じた想いを絵にしようとしてビジュアルに落とし込んでみたら、結局学生時代に描いたことのある絵にそっくりになったりw
人間根っこは簡単には変わらないということですかね。
「変化するもの」は、表現方法ですね。
毎回新しいシリーズを描くたびに少しずつ、ときには大胆にタッチや画材を変化させてチャレンジします。
同じテイストで自分の絵を確立させたいおもいもありますが、基本的に半年ペースで過去の自分の作品がキライになると言う癖なのでw
そのたびに「もっとこんな感じかな」と工夫をこらしています。まだ成長しているということなのでしょうか。
作ったものは発表することでやっとアウトプットになるので
絶対に発信するようにしています。
今回のアワードに参加した理由は?
そういうことから何か楽しい事につながることが今まで多かったので笑
北窓さんは「アーティスト」「イラストレーター」どちらを目指したい、などあるのでしょうか。
おシゴトで自分のイラストが印刷物やウェブを介していろんな人に影響を与えることの方が人の役にたつきっかけを作っているということで社会の一員になっているということを実感できるので嬉しいかもしれません。
一点物の作品を購入していただいてその家族ですとか、個人的に楽しんでもらうって言うのもとても素晴らしいことだと思っています。
今一番やりたい仕事は「小説の装画」。
本屋はまるで宝箱のよう。
今後のビジョンとしてこんな仕事をやりたい!などお聞かせください。
イラストレーターやデザイナーによって表現されたもの、コピーライターやいろんな方が関わっているものが集まった巨大な場所。本屋さんをそんな風に感じるようになってからは、本屋さんがまるで宝箱のように見えてきました。
映画やドラマやアニメをたくさん見たからこそ、文字だけで構成された物語に今ひかれているのかもしれません。
昔からある「文章」という表現方法は変わらず今に引き継がれているもの、その世界のイメージを補うただひとつのビジュアル表現として装画はある。そんな表現の美しさにあこがれています。
さいごに
素直に自分と向き合いながら制作を続けてこられた北窓さんの言葉は
作風通りの人の心に灯りをともすようなあたたかい気持ちにさせられました。
これからの北窓優太の活躍にもご期待ください!
「NANIWA BOLIE 3人展」
全日在廊の予定です。ぜひお越しください。
Profile 北窓優太
1982年1月30日 大阪生まれ
高校卒業後、3年間バンド活動に勤しむ。
脱退後、仲間と共にアジア各国を放浪する中で、絵描きの道を志す。スポーツ系デザイン会社でのデザイナーや、企業の広報を経験。
現在、株式会社188に所属するイラストレーター/グラフィックデザイナー。
さまざまなタッチのイラストや、PC技術を駆使した写真加工など、深みのある絵づくりを得意とし、
ジャンルや手法にとらわれず数々のビジュアルを手がけている。
KITAMADO YUTA official site http://www.madonoyuube.com/
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